第62回全国数学教育学会における総会にて,新理事の互選によって会長を拝命いたしました。著しく社会が変化する時代において,数学教育が果たす役割を自覚し,新しい時代や社会に沿った理論的・実践的研究を,学会員の皆様とともに推し進めたいと考えています。

 新しい時代の数学教育に向けて,国内外で活発な研究やカリキュラム構想・開発がなされています。海外及び国内の両方で,「21世紀を生き抜く上でのコンピテンシー・ベースのカリキュラムの実装」や「デジタル変革時代における数学教育」は大きなテーマになっています。数学授業に,AI・デジタル技術をどのように活用し,デジタル・トランスフォーメーション化を図るかについては,特に活発な議論がなされていますし,学校教育の中では様々な試みがなされています。また,人口変動や地球環境の有限性を踏まえた持続可能な社会づくりや,不登校児童生徒,特別な支援を有する児童・生徒や特異な才能を有する子どもをどのように育てるかなど,多くの教育的課題の解決が求められています。

 数学教育に携わるわれわれが自覚的であるべきこととして,予想の難しいVUCAの時代,デジタル技術が教育にも社会にも大きな位置を占める社会を生き抜く上で,算数・数学は特に重要な教科であるということです。これについては,数学教育関係者や算数・数学の教師のみならず,他の教科を専門とする方々,さらには社会に暮らす多くの方々からも,大きな期待が寄せられていると受けとめています。新しい時代は,まさに数学教育が活躍すべき時代と言っても,過言ではないように思います。

 問題は,数学教育が社会の期待に対して,確かな貢献を実行しうるだけの理論的・実践的な知見,実際に貢献しうることを示すデータや分析が提起されているか,さらには我々の導く結果や結論が,研究者のみならず,教師や一般の社会の方々に対しても,わかりやすい言葉で語られているかということです。

 数学教育学が,学問的にも実践的にも,新しい社会や世界に対して価値ある学問としてより成熟していくことが求められていると思います。新しい時代の数学教育にふさわしい思想や哲学を大いに議論しつつ,数学教育の本質を常に問い直し,理論構築や実践開発を通して,子どもたちの確かな成長へと結びつく算数・数学教育を共につくりあげていきたいと思います。

 全国数学教育学会は,多様な立場の方が参加し,協働し,活躍できる場です。個々の研究発表や共同研究の促進,多様な立場の専門家の間での横断的な取り組み,研究者と実践者との協同や対話・研究協力ができる環境作りに努めています。学会開催時には,学会に不慣れな方や数学教育研究に興味・関心を持たれている大学院生や学校の教員の方々との交流を深める場も用意されています。学会開催時以外では,全国数学教育学会の公式ウェブサイトを通して,研究と交流の活性化を図って参りたいと思います。

 学会員の皆様から忌憚のないご意見をいただきながら,新しい時代の数学教育学研究を共につくりあげていけるよう努めてまいりたいと存じます。ご支援,ご協力のほど,何とぞよろしくお願いいたします。

令和7年12月1日
全国数学教育学会会長
岡崎 正和